マスプロモの衰退とWii

なんだか最近は広告戦略も変化しているようです。要するにTVCMだけ撃っときゃある程度周知できるだろうという事ではなくなってきているらしい。

発熱地帯:マスプロモーション衰退後の世界(前編)

「知る」人のうち、どれだけが「興味を持つ」人になるのか。「知る」→「興味を持つ」の比率がおそろしく悪くなっているのが今の時代の特性です。単純にマス広告に資金を投じるというやり方は、きわめて効率が悪く、資金力をもつ企業ならあるいは可能かもしれませんが、多くのゲーム会社にとっては厳しい話です。

さらにここでは「プロモーション費用至上主義」みたいな事になりかねないという所まで言及されています。「メディアアウト」という「広告手法が先にあり、それにそって製品をつくってしまう」ような状態になっている、と。

良い物を作っても知ってもらわなければ意味がないが、そこで広告費に予算を回してしまう事が本当に解決に繋がるのかというと疑問ですね。

ただそこで『LocoRoco』が広告に金掛けたのにイマイチという話をするのは少し詭弁な気がするんですが、もし『LocoRoco』がDS用のソフトであっても広告に見合う売上がでたかと言われるとあまりそんな気はしない。そもそもゲームにおいてマスプロモーションというのはあくまでも「初速」に勢いをつける程度の物なのではないのだろうか。そしてそのマスプロモに応えるのはたいていコアユーザーです。逆に言うとマスプロモだけがきっかけで購入する人こそが「コアユーザー」と呼べるわけです。

自分がいままで大して興味を持っていなかったジャンルのゲームを購入したきっかけとは何だったかを思い出すと良いかもしれません。僕の記憶ではTVCMだけを見て購入に走れたのはシリーズ物とか、もともと自分が「こんなの欲しい!」と思っていた物だけです。例えば『シムシティ』をやるようになったきっかけは友達の家でやらされたからであり、『Age of Empire』をやるようになったのも仲間内で流行りだしたからです。結局広告以外の「+α」の要素が有って初めてハマったわけです。

普通に考えれば、広告によって商品の存在を知っただけで購入にまで至るには、多少なりとも「こんな物がほしい」と思っていなければ無理な話ですよね。脳トレのCMは、ある程度認知されて皆が「欲しいかも」と思い始めている今だからこそ、CMを見た時に購買意欲が沸くわけです。広告以外の「+α」を最初から持っているという事ですね。

何にせよ昔から広告オンリーで物が売れた事はあんまり無かったんじゃないかと思うわけですよ。

そこにきて最近はネットとかSNSの普及なんかで、さらに広告という物が軽視されつつあるわけです。広告だけならば製品の良い面だけを見る事ができたんですが、ネットのせいで悪い面も簡単に調べられるようになったという事ですね。価格.comなんかが良い例かな、ちょっと高い買い物をする時は絶対評判を調べるようになりましたからね。

そうやって広告の効果が薄くなってきた所で、以前と同じ効果を得るためだけにより大規模にプロモーションを始めてしまうのでは意味が無いわけです。広告の周知能力があからさまに落ちたというわけではないですからね。

売るための先ず一つの壁はネットや知人の評判をクリアする事です。いくら広告で好印象を与えてもちょっとネットで調べたりして、ユーザーの生の悪評価を見てしまうと購買意欲は半減です。さらに「あのCMそういう所は隠してるんだ」などと企業にまで不信感を抱きかねません。企業の信頼性というのは以前にも増して重要になってきますね。

そして更には、興味を抱かせる事が必要です。

広告には周知能力はかなりありますが、それは興味を抱かせる能力とは別です。だから普通に広告するだけでは、最初から興味があった人しか買ってくれないわけです。

DSの成功例があるからまた言うわけですけど、要するに「口コミ」とか「話題」なんです。ゲームを敬遠する人がいる理由には「時間の無駄」ってのがあるんですが、それが友達との話題になるならその価値観は簡単に逆転してしまうわけです。いままで全く興味がなかった分野でも、ちょっと挑戦してみようかという気になってしまう人が多い。しかも脳トレの場合には「脳年齢」という気になる数字まで出ちゃうわけです。そしてさらに『英語漬け』やら『DSお料理ナビ』という、本当に実用的なソフトまででてきて話題になる。

DSの場合はかなりの「趣味・実用」分野の礎的な存在になり得たからこそここまで普及しているわけなので、このパターンを他の種類の製品に当てはめるのも簡単では無い気がしますけどね。本屋に行って「趣味・実用」のコーナーを見ればDSの将来が見えてくるかもしれません。(DSが一番凄いのは、「DSで新たな趣味を始めてみる」という状態になってる事ですね。「趣味ポータル」になっとる。)

そしてWiiではどのような方法でユーザーに興味を持たせる事が必要になってくるかという話になりますが、やはり「趣味・実用」のベースを担うようにするのが手だと思います。DSでカバーしきれなかった分野をWiiでカバーする、全く形態の違う2つの機種だからできる事ですね。新たな趣味ポータルとしての地位を確立できれば成功も同然です。が、Wiiが趣味ポータルに向いているかと言われると、結構謎な部分がありますね。スポーツ・エクササイズ系には向いてると思いますけど。まぁ最初のキャッチーなウリとしてスポーツ系の実用ソフトだして、とりあえず口コミで広がるベースは作るんだと思います。

で問題はそこからでして、DSみたいに気軽に友達に見せたりとかできないから口コミの力は弱いんじゃないかなぁなんて、思うわけです。そして任天堂自信はまだその部分のアプローチを見せていない。そのあたりはまた今度書きます。